脂肪細胞と新型コロナウイルス
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすコロナウイルスが脂肪細胞や脂肪中の特定の免疫細胞に感染することを示唆する新しい研究結果が発表されました。
新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」は、脂肪細胞や脂肪組織に存在する特定の免疫細胞に直接感染する可能性があるそうです。
10月25日にbioRxivに掲載された最新の研究では、肥満手術で採取した脂肪組織がコロナウイルスに感染するかどうかを実験し、脂肪細胞(アディポサイト)が感染しても、低レベルの炎症を起こすことがわかりました。また、脂肪組織の中にあるマクロファージと呼ばれる免疫細胞も感染すると、より激しい炎症反応を起こすことがわかりました。
研究チームは、これらの実験に加えて、COVID-19感染症で死亡した患者の脂肪組織を調べたところ、さまざまな臓器を取り囲む脂肪の中にコロナウイルスの粒子を発見しています。HIVやインフルエンザなどのウイルスは、免疫システムから身を隠すために脂肪組織に潜んでいることがあるそうです。SARS-CoV-2も理論的には同様のことを行い、脂肪がウイルスの貯蔵庫になる可能性があるそうです。
肥満のリスクファクター
今回の研究はまだ査読前の論文であることに注意する必要がありますが、パンデミックの初期の頃から、肥満はリスクファクターでした。まず、腹部の余分な脂肪が横隔膜を押し、肺の空気の流れを制限する可能性があります。さらに、肥満の人の血液は、低脂肪の人に比べて固まりやすい傾向があります。これは、広範囲の血液凝固を引き起こす可能性のあるCOVID-19にとって、もう一つの大きな問題となりえます。
また、体内に脂肪が蓄積すると、免疫細胞が多く産生される脾臓、骨髄、胸腺に脂肪細胞が浸潤します。これにより、生成される免疫細胞の数が減少したり、効果が低下したりすることで、免疫システムが弱体化してしまうそうです。過剰な脂肪は、脂肪細胞がサイトカインと呼ばれる炎症物質を放出し、マクロファージが死んだ脂肪細胞を体外に排出しようとするため、全身の慢性的な低レベルの炎症に拍車をかける可能性があるとのことです。
この研究は比較的痩せ型が多いアジアより、欧米のほうが新型コロナウイルス感染症が流行している理由を裏付ける研究となるかもしれません。
参考文献
https://www.livescience.com/coronavirus-may-infect-fat-tissue