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咬筋 に新たな部位?
これまで記述されたことのない身体の部位が発見されました。発見された部位は下顎を引き上げ、咀嚼するために重要な咬筋の深層部となります。この研究は『Annals of Anatomy』誌のオンライン版にて発表されています(12月2日付)。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0940960221002053?via%3Dihub
これまでの解剖学の知見
現代の解剖学の教科書では、咬筋は深層と表層の2つの層で構成されていると説明されています。しかし、教科書の中には、第3の層が存在する可能性に言及しているものはいくつかあっても、その位置については一貫性がありませんでした。そこで研究チームは、歴史的な文献が示唆するように、この目立つ顎の筋肉に隠れた超深層があるかどうかを確認することにしたそうです。
研究方法
研究チームは16体の「新鮮な」死体からCTスキャンを撮影し、生きている被験者からMRIスキャンを取得して検討しました。これらの検査を通じて、研究チームは咬筋の「解剖学的に明確な」第三の層を特定しました。この超深層は、頬骨突起(「頬骨」の一部を形成し、耳のすぐ前に感じられる骨の突起)から、筋突起(下顎骨にある三角形の突起)まで続いています。
研究チームは筋線維の配列から、この筋層は、冠状突起を“引き上げたり、引っ込めたり”することで下顎を安定させる役割を果たしている可能性を語っています。
「過去100年間の解剖学的研究は、あらゆる手段を講じてきたと一般に考えられていますが、今回の発見は、動物学者が脊椎動物の新種を発見したようなものです」と、バーゼル大学歯科医学センター教授で臨床医のイェンス・クリストフ・トゥルプ博士は述べています。
Musculus masseter pars coronidea
研究チームは論文の中で、この新発見の筋層を “Musculus masseter pars coronidea”(咬筋の筋突起部)と命名することを提案しています。この筋層について知ることで、医師は顎の手術をより適切に行うことができ、また、顎の骨と頭蓋骨をつなぐ関節を含む疾患をより適切に治療できるようになるかもしれないとのことです。
参考文献